実家で一人暮らしをしている母、
父と心底ラブラブの夫婦だったこと、
「お父ちゃん、愛してるよ〜」と
日本人とは思えない愛情表現、
大事に大事にしたこと。
すごいことだと家族も思っています。
それだけ父が素敵だったこと、
子どもたちも忘れられません。
家のなかが楽しくて
興が乗ると夜ご飯のとちゅうで
父が歌って踊り、
それにつられて母も子どもたちも
笑い歌い、楽しい思い出がいっぱい。
そんな母の家で、
ある日、天上の照明器具を
交換することになりました。
父はすでに天井の上の
空にいて母を見守っています。
母の様子を詩にしました。
「蜘蛛の糸」@母の家にて
するするすると
蜘蛛の糸のように
シャンデリアが降りてくる
のじま電気の電気工の人が
「あ〜この天井は古いから
重たいシーリングファンの
シャンデリアはつきませんね」という
母ががっかりする
「回って動く物があれば
誰がいなくても
この部屋が楽しくなるのにねえ」
するするすると
蜘蛛の糸のように
シャンデリアが降りてくる
「回りはしないけれど
こっちのシャンデリアは
すずらんの花の灯が
9つもついているわよ」と
私がすすめる
「うわあ 素敵 似合うねえこの部屋に」
と母が喜ぶ
久しぶりに集まった息子や娘が
9つのすずらんの下でLPレコードをかけはじめる
するするすると
蜘蛛の糸のように
シャンデリアが昇っていく
「古いシャンデリアは処分しましょうか」と
のじま電気の電気工の人が
気をきかせたつもりでいう
「お母さん そうしてもらえば
古いのは重たいし あってもしょうがないわよ」
「そうはいかないの
あれはお父さんとこの家に住み始めたとき
二人で選んだの これは大事なんだわ」
蜘蛛の糸が耳を澄ませる
「お母さん
処分してもらっていいんじゃない」
「そうはいかないの
昔 この家に住み始めたとき
お父さんと これがいいねって決めたんだわ」
蜘蛛の糸はどうしようかと
昇ったり降りたりを繰り返す
新しいシャンデリアの灯りが
久しぶりに集まった家族を暖かく包んでいる
するするするすると
蜘蛛の糸のように
シャンデリアが
♡♡♡
母は、若い頃、演劇をしていて
舞台を見にきていたNHKの人に
スカウトされました。
私「NHK入ってたら面白かったね」。
母「それだめなんだわ。
そっちの道に行ったら
お父ちゃんに会えない。
看護婦さんになって、
おばあちゃんに会えて、
お父ちゃんに会わないとだめなんだわ」
私「お父ちゃんがこう言ってたよ。
お母ちゃんは宝石やブランド品を
いちども欲しがったことがない。
不思議だなあって」
母「そんなもの欲しいとだめなんだわ。
お父ちゃんが、
崖の上にある花を
取ってあげよとして手を伸ばしたら困る。
いらない」
愛はしあわせ力だね。
親の話はちょこちょこと面白い。